1.突然の膵臓癌宣言
一般世間の健康な老人は、ほとんど介護サービスの世話にならずにピンピンコロリ(PPK)と
死にたいと思っているであろう。私は一介の介護サービス従事者であり、その実、PPKを願望
していた1人である。はたして、その私にPPKの機会が、突然に巡ってきたのである。本稿を
起稿している1ヶ月半前にやってきたのだ。当の本人はビックリである。ショックである。周囲
の人々は、そのように元気なのに何になの? なぜに入院するのである。見た目はこのように
元気だが、内臓が非常に悪いらしい。1ヶ月後には入院して腫瘍の摘出手術をする予定である。
家族、職場や同好の友人達に説明してまわった。手術後は、2ヶ月ほどの療養期間を設ける
つもりであると、・・・・・・。 私はこのように各人へ膵臓癌の手術を宣言したのである。
全身麻酔の大手術である。担当の医師から、手術の危険性を説明された。その概要は術中に
命を失う可能性があることを説明しているのだ。それでも手術を希望されますか?そうであれば
この手術同意書に署名のうえ捺印下さい。
2.人間ドッグの再診結果
2.1 ピンピンコロリ(PPK)
大手術のため、絶命する危険性が出現したのだ。私はこの時PPKの潮時は何時ごろ
なんだろうと初めて考えた。あなたは1ヶ月後に死ぬ機会があると、医師からつげられ
たらどうします。70歳にも満たない前期高齢者で死ぬとは切ない限りだ。余命4~
5年と言われれば、体力や体調の変化を認識しながら、気持ちを整理する時間がある。
1月15日午後、雪がまっている。病院の外は、一面の銀世界。空がどんより曇って
いる。ちょうど、私の心のようである。手術後、このようにペンを走らせている私は、
手術前に心の整理なんか、何もできなかった。
2.2 再診結果と私の決断
① 再診とその結果
ことのきっかけは、10月3日の人間ドッグの所見で、要再診の判定が出た事による。
大便の潜血反応で陽性と出た。大腸ポリープ要検査の連絡である。5年前に初期段階の
ポリープを見つけ、内視鏡でポリープを切除していた。その際、馴染みの先生の助言で、
胆嚢内気泡もどきの詳細検査(MRI)も行っていた。ちょうど5年程経過しており、
今回、大腸ポリープと胆嚢の容態を検査しようとなった。先生に全てお任せします。
早速、先生は11月21日に胆嚢のMRIと、11月25日に大腸ポリープ検査の予約
をした。11月21日の胆嚢MRIは20分で終了。11月25日の大腸ポリープ検査
は4時間程度で終了。大腸ポリープ検査は患者にも大腸の映像を見せてくれる。心配し
ながら映像を眺めていたが、疑わしいと思えるポリープは見出せなかった。潜血は切痔
によるものと確認された。痔を治療してくださいとの所見である。
これで再診は無事に済んだ。さあ帰ろうと思った時である。馴染みの先生から大腸も、
胆嚢も異常ありません。しかしMRI映像のここを見てください。映像に少し影があり
ます。ここは膵臓という臓器です。5年前のあなたの同じ映像と見比べてください。
水管のこの部分が明確に違うでしょう。5年前は水管が完全につながっているでしょう。
ところが今回は水管がここで途切れています。この途切れは、ここ5年の間にできた
ものです。今回のMRI映像をみて、膵臓は今後も経過観察との所見にはなりません。
明後日でももう一回、病院へ来てくれませんか?馴染みの先生があわてているのである。
来月は師走、年明けではだめですか? できるだけ早いほうが良い。1週間後は可能
ですか?いろいろ検査しますので。このMRIから推測すると、2~3cmの腫瘍です。
悪性であるとすぐにでも手術したほうが良い。私は1週間後の再受診を約束し、さらに
その場で血液による膵臓癌のマーカー検査も行った。マーカー検査の結果は後日となる。
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② 私の決断
ここからが私の気持ちである。突然、名横綱の千代の富士関が膵臓癌で亡くなった。
私はこのニュースを思い出し、すぐ手術すると決めた。普通膵臓は無言の臓器といわれ、
相当に悪化しなければ病状を現わさない。病状が現れた時はすでに手遅れである。すると
手術をせずに、放射線や服薬などで延命治療になると耳にしたことがある。私の場合は
手術すると医者が提言するので、もう手遅れでダメという状態までは進行していないと
思えた。私の場合、まだ手術して治癒することができそうだ。何事もやってみなければ
わからない。それなら手術にかけよう。一か八かである。
手術すると決めたら、手術・療養期間の確保である。まず、12月11日以降は
予定や計画を白紙に戻すことである。この対応や経過は、これ以降の章で列記する。
そうして、やっと2~3ヶ月の治療期間を確保したのである。
③ ドクターX 大門先生
12月の上・中旬にかけてTVドラマのドクターXが放映された。最終章の予告を
見ていたら、膵臓癌がメインテーマのように感じた。はたして最終章の前編は膵臓癌
であった。私と同一の膵体尾部(さきちょ)癌の摘出手術である。ライバルの医師が
最新鋭の器具を利用して手術するのである。当然、大門未知子先生にはその器具を操作
できる技術がない。そこで、大門先生はライバル医師の助手として、手術に参加する
のである。通常の手術法では6時間かかるが最新技術による手術なので半分の3時間
で完了した。あ、あ。私の場合もそのように短時間で終了して欲しいなあ。ドラマは
後編へと進む。大門先生の同僚で麻酔医がこれまた膵臓癌であった。腫瘍の部位は
膵臓の根本部である。この部位の手術は、膵臓腫瘍部の摘出だけでなく、十二指腸も
摘出する。その後、胃と小腸をつなぎあわせる。さらに、膵臓と胆管もつなぐので
平均的な手術時間は12時間である。同僚の麻酔医が急患となり、病院へ運ばれた。
大門先生は独断で最新鋭の器具を利用して手術に取り組んだ。ところがその新技術を
持ってしても問題点が発生した。大門先生は先輩の指示に従い手術続行をあきらめた。
開腹した腹を閉じ始めたのである。私はこの場面を見て、手術を未完とする場合が
あることを、嫌がうえにも再認識させられた。ドラマの結末は奇跡が起こりハピー
エンドの内容であった。
ドクターXの大門先生はフィクションの世界である。私は現実の世界に生きている。
当然、手術も現実の世界である。執刀医の先生を信用して現実の手術に臨むしかない。
現実の手術は、一か八かの掛けである。わが人生において、最大の掛けをしよう。
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更新来歴
追加 手術後また手術>> 身内の不幸がつづく> 投稿。 掲載日2018.07.29
追加 手術後また手術>> お金は天下のまわりもの> 投稿。 読む 掲載日2019.12.09
追加 手術後また手術>>ぼちぼち社会復帰介護・民児委員> 投稿。 読む 掲載日2020.01.05
追加 手術後また手術>>ぼちぼち社会復帰 家庭菜園> 投稿。読む 掲載日2020.02.03
追加 手術後また手術>>ぼちぼち社会復帰 趣味> 投稿。 読む 掲載日2021.01.04
追加 手術後また手術>>社会復帰 ハーモニカ 1.2> 投稿。 読む 掲載日2021.02.26
追加 手術後また手術>>社会復帰 ハーモニカ 3の1> 投稿。 読む 掲載日2021.08.14
追加 手術後また手術>>社会復帰 ハーモニカ 3の2> 投稿。 読む 掲載日2021.08.14
追加 手術後また手術>>新たな病気で再入院> 投稿。 読む 掲載日2021.08.14
追加 手術後また手術>>術後経過・復帰> 投稿。 読む 掲載日2021.08.14
2021.08.14をもって、投稿は終了しました。