8.生き方 その4(正月明けの状況)
      
  これまでの内容は、入院する前日までに書き下ししておかなければならないものである。      
 術後の経過順調の状態で出筆しているので、緊迫感、切迫感が感じられない。正月明けは      
 ハーモニカ講習会を受講するために課題曲などを練習していたのである。練習中は精神を      
 ハーモニカに集中できて、いろんな悩みも忘れることができる。本ハーモニカ講習会後に      
 いつもXXXハーモニカ連盟OBのLさんに会い、反省会と称して酒を酌み交わしているのだ。      
 今回は私が禁酒なので、酒抜きで談話しようとしたのである。しばしば、連盟事業部の      
 運営課題を相談して、助言を頂いていた。今回は私の病気・手術などを説明して今後の      
 身の振り方を相談したのは当然のことである。Lさんからはまず治療に専念する。事業部      
 の大きな行事は初秋であり、それまでに体調を回復させることと助言を頂いた。まったく      
 その通りと私も思う。体調が回復してから身の振り方を考えよう。Lさんとは退院後、      
 早い時期に再会したいものである。      
  そうこうしている内に入院がさし迫ってきた。      
  そのような某日、私が風呂に入ってふと思いついたことである。      
       
   ① 近頃社友で永眠された方々     
    NSさん享年78歳。 酒、煙草が好き。酒屋で缶詰を肴に酒を酌み交わした仲。    
    KNさん享年73歳。 職場の元上司。スナックで酒の飲み方を教わった。    
    TSさん享年68歳。 職場の同僚。元住居が隣。家族ごとでお付き合いの仲。
    
    あの世にはNSさん、KNさん、TSさんが住んでいる。私もあの世とやらに着いたら    
   社友の方々と、一緒に楽しく暮らせると思う。あの世も悪くはあるまい。    
   NSさんは、おい鐘ヶ江。久しぶりだ。一緒に酒のもう。KNさんは、もっとゆっくり    
   くればよいのに。何であわてて俺の後ばかりついてくるんだいお前は。TSさんは、    
   お互いに同じ年で死んだんだ奇遇やな。近くに住んでいたMNさんHKさんもいるよ。    
   四人そろったので、久しぶりに麻雀でもしようか。このような挨拶になるかもな。    
   あの世もまんざらではないだろう。社友の方々の面影が脳裏に浮かんでは消えた。    
       
   ② 手術台、ICU室で     
    13日の金曜日。いざ手術台へ。ドクターXの大門未知子先生、失敗しないでくれ。    
   執刀医の先生、助手の先生方すべてをお任せします。是非、生還させてください。    
   手術台で仰向けに寝ると、いろんな測定器の端子を身体に貼り付け始めた。ここ    
   までは覚えているが、後の6時間程はまったく覚えていない。ICU室に移動し目覚    
   めると、ベッドの横に家内、長女、長男が見守っていた。無事に生還したのだ。    
   皆に有難うとお礼を言ったと思う。それ以後もICU室で、1昼夜を過ごした。ICU    
   室でうつらうつらしている時、両親、姉、兄、社友NSさん、KNさん、TSさん達は    
   迎えに来なかった。結果的には、ピンピンコロリの機会を逸したのである。    
    私は病気が発見された時点で、墓場に足を1歩、踏み入れた状態であった。    
   本当はピンピンコロリを希望して、墓場に横たわろうと思っていたのかな?    
   もう少し自分の考えを深く追求してみようと思った。
       
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